いまロード中

No.0720:いつもあなたの「計画」は甘すぎる

No.0720:いつもあなたの「計画」は甘すぎる

ThinkingIOI イェール大学集中講義・思考の穴

  • アン・ウーキョン著
    • アン・ウーキョン
      • イェール大学心理学教授
      • イェール大学「シンキング・ラボ」ディレクター
      • イリノイ大学アーバナシャンペーン校で心理学の博士号を取得後イェール大学助教、ヴァンダービルト大学准教授を経て現職。
      • 2022年、社会科学分野の優れた教育に贈られるイェール大学レックス・ヒクソン賞を受賞。
  • 花塚恵訳
    • 花塚恵
      • 翻訳家
      • 福井県福井市生まれ。英国サリー大学卒業。
      • 「SLEEP最高の脳と身体をつくる睡眠の技術」(ダイヤモンド社)
      • 「LEADER‘S LANGUAGE 言葉遣いこそ最強の武器」(東洋経済新報社)。)
  • ダイヤモンド社刊

(Amazonサイトへ)


●NO717「損失回避・保有効果」・・・クローゼットに衣類があふれる理由。
●NO718「『0パーセント』と『1パーセント』の違い」・・・1%の違いは大違い。
●NO719「自分で自分を生きづらくしている?」・・・こころの持ちよう。
●NO720「いつもあなたの『計画』は甘すぎる」・・・大阪万博も似たようなもの。(笑)

各々お楽しみください。なお、小生の好きな洋画俳優のお話は年末配信と致します。

●何かを完了させるのに必要となる時間と労力は
少なく見積もられることが多い。
締め切りが遅れる、予算を超過する、やり遂げる前にエネルギーが尽きる
といったことが頻繁におこるのはそのためだ。

そうした「計画錯誤」が生じた悪名高き例として有名なのが
オーストラリアのシドニーオペラハウスの建設だ。
当初は700万ドルの予算が組まれていたが
最終的には規模が小さくなったうえに費用は1億2000万ドルかかり
完成までにかかった時間は当初の見積もりより10年延びた。

また、アメリカのデンバー国際空港の建設では
当初の見積もりより費用が20億ドル以上膨らみ
完成まで16カ月長くかかった。

また、ニューイングランド地方に暮らす者としては
高速道路の地下化を目指したボストンのビッグ・ディグ事業に
触れないわけにはいかない。
こちらは当初の予算を190億ドル超過し、完成が10年遅れた。

著者はいう「業者が出す見積もりより50%多くの時間と予算を
確保しておくこと」。
さてさて、2025年の大阪万博も同じようなもの?(笑)

「言いやすい名前」のものを高く評価してしまう
流暢性効果は、たちの悪い不合理な錯覚も招く。
実は判断する対象とは本質的に無関係な要素に流暢性を感じた場合でも
判断をゆがめられるおそれがある。

たとえば、株式の名称が市場でのパフォーマンスへの期待度合いに
影響を及ぼすかどうかを調べた研究がある。
なんと「名称」にも流暢性効果が生じるのだ。
(「流暢性効果については「でんごんばん」NO714参照)
研究者たちはまず、発音しやすい架空の株式名称(フリンクス、タンリー)と
あまり発音しやすくない名称(ユリムニアス、クーオウン)を考案した。
そして、実験の参加者にそうした名称だけを情報として与えたところ
発音しやすい(つまり流暢性がある)名称の株式は高く評価され、あまり発音
しやすくない(つまりは流暢性がない)名称の株式は低く評価された。


研究者たちは実在する株式にも注目し、発音しやすい名称とそうでもない名称の
株価の推移を追った。すると、発音しやすい名称の株式のほうが、
発音しづらい名称の株式に比べて優れたパフォーマンスを見せた。


驚いたことに、ニューヨーク証券取引所、アメリカン証券取引所の
どちらを見ても、言葉として発音できるティッカーコード
(アメリカの株式市場で銘柄を識別するためのコード)を持つ企業の
パフォーマンスは、言葉として発音できないティッカーコードの企業に
比べてはるかに優れていた。

例・カー・グローバル社=「KAR(カー)」
ヒューレット・パッカード=「HPQ(エイチピーキュー)」
ティッカーコードの流暢性の度合いなど
会社としての優良性にはまったく関係がないはずなのに。


なぜ賢明な人たちが「瀉血」をしていたのか?
場合によっては、何年、何十年、いや何世紀にもわたって
特定の集団に属する人々全体が確証バイアスにとらわれることがある。
その例としてよく用いられるのが「瀉血(しゃけつ)」だ。
 
古代から19世紀後半にかけて、西洋では病人から「悪い血」を抜けば
病気は治ると信じられていた。
ジョージ・ワシントンは喉の感染症の治療として1.7リットルの血を抜かれ
そのせいで亡くなったと言われている。
ワインボトル2本分の血を抜かれたのだ!

  
●賢明な私たちの先祖が2000年以上にわたり、生存に不可欠なものを
体内から抜くこと有益だと信じていたのはなぜか?
ワシントンが生まれた時代ではすでに地球は丸いと考えられるように
なっていたし、アイザック・ニュートン卿によって運動の3法則も
見出されていたというのに、瀉血は優れた治療とみなされたままだった。
1850年にタイムスリップして、背中の痛みに苦しむ自分を想像してみて
ほしい。
そして、ジョージ4世が1820年に約4リットルの血を抜き
そこから10年生き永らえたという話を耳にする。
不眠に悩む隣人から、瀉血したら眠れるようになったと聞かさる。
さらには、「病気になって瀉血する人の約4分の3が治る」というのが
通説となっている(この数字は私の創作だ)。
4分の3が治るというのは説得力がある。
そうしてあなたも瀉血を試してみると、実際に体調がよくなったと感じる。

だが、ここに落とし穴がある。
病気になっても瀉血しなかった人が100人いて、そのうち75人の体調も
回復していたらどうだろう。つまり、瀉血をしてもしなくても
4分の3の人の体調が回復するということだ。

人間の身体には治癒力が備わっているので、瀉血のおかげで治ったとの
誤解が生じる可能性があるのは仕方のないことだ。
しかしながら、私たちの先祖は
瀉血しなかった人はどうだったかという確認を怠った。
自分が信じるものの裏付けとなる証拠にしか目を向けなかったのだ。


素朴で素直な見方
私(著者)の娘が小学1年生のときに
夫が全米科学アカデミーから栄誉あるトロランド賞を授与された。
そして家族全員で、授賞式に出席するためワシントンDCへ向かった。
式典が始まるのを待つあいだ、夫はほかのさまざまな分野で賞を授与された
何十人もの受賞者と一緒に壇上に座っていた。私とふたりの子どもたちは
アメリカで屈指の科学者たちに混じって客席に座っていた。
そんななか、娘がとても大きな声で私に尋ねた。
「ママ、あそこには、どうして女の人より男の人のほうが多くいるの?」
私は驚いたが、娘の観察眼に心から誇らしく思った。
そして恥ずかしい気持ちになった。
娘が大きな声を出したからではない。
壇上に、ありありと男女の数の不均衡が表れていることを
気にもとめなかった自分を恥じたのだ。
なるほどです。でも、私見ですが、どちらでもいいんじゃないでしょうか。
無理に男女が同じ数でいる方がいいとも思わないのですが・・・。
次週の「でんごんばん」は、M社の読書愛好家のM・H氏からの「OHAGI通信」で
いただいた興味深いお話の数々です。お楽しみに。

コメントを送信