No.0022:コミュニケーションはデータ蓄積
「0から1をつくる・地元で見つけた、世界での勝ち方」
・本橋麻里著
- 本橋麻里
- 1986年北海道北見市生まれ
- 12歳で本格的にカーリングを始め、チーム青森のメンバーとして2006年トリノ、2010年バンクーバー五輪に出場する。
- バンクーバー五輪後に新チームロコ・ソラーレを立ち上げ、2018年平昌五輪に出場、銅メダルを獲得した。
- 2018年8月にチームを社団法人化し、自身は代表理事としてマネジメントしている。
コミュニケーションはデータ蓄積
●私の故郷は北海道の常呂町(ところちょう)です。現在は北見市常呂町になります。北見市は人口約12万人、そのうち常呂町は3700人という小さな町です。北見市全体では焼き肉が有名です。人口に対する焼肉屋の割合が日本で最も高く、安くておいしいお店が多いんです。
●常呂はカーラーの名産地です。1998年の長野大会から、18年の平昌大会まで6大会連続で五輪に送り出しています。私の場合は小栗祐治さんに誘われたのがきっかけです。小栗のじっちゃんと慕われていた、常呂でカーリングを始めた世代の熱心な“カーリングおじいちゃん”ですね。常呂カーリング協会の初代会長でもあります。
●カーリングは相手への敬意を大切にするスポーツです。と同時に世界でも珍しい審判がいない競技なので、ジャッジは基本的にはプレーゾーンにいる8選手が行い、何かあれば話し合いで解決します。
●2010年の春からロコ・ソラーレは助走を始めました。他のチームで活躍している選手を引き抜くようなことだけはしたくなかったので、常呂のカーリング協会の関係者にもお願いして、みんなその時点でフリーというか、所属のない選手にしました。
●私の願いは、チーム青森のような地元に愛されるチームにしたいということ。「ソラーレ」はイタリア語で「太陽」という意味ですが、それに「ローカル」を付けたチーム名にはその想いが込められています。
●ロコ・ソラーレを結成し、よちよち歩きを始めたころは、不安ばかり抱いていました。「これでいいのだろうか。私のエゴに人を巻き込んでいるだけではないのか」。常に悩みました。そんな時、小栗さんの言葉は、私を開放してくれました。誰かのために頑張るのも大切だけれど、自分のたまに頑張ってそれで誰かが喜んでくれるなら、結果は同じ。世の中多くの仕事でも同じだと思うんです。
●講演などで「コミュニケーション能力が低いのですが、人間関係を円滑にするためのコツは何ですか?」という質問をしばしば受けるのですが、そういう時は「データだと思ってください」と答えることがあります。ロコ・ソラーレでいうと、チーム結成時に密なコミュニケーションを掲げ、ソチ五輪から次の4年で「バカなことでも全力で挑む」ということを誓いました。
●アイスの内外で相手に興味を持って、たとえば鈴木夕湖は卓球が上手いとか、吉田夕梨花は馬刺しが好きとか、直接カーリングに関係ない事プライベートを知る事も大切な作業です。商談でも就職活動でも恋愛でも、いざアタックするときには相手のことを徹底的に調べ学ぼうとしないと成功しません。それと一緒です。
●そんな蓄積されたデータを用いて、ある程度のコミュニケーションのベースを築くことが出来るのですが、それをどのように使うかは次のステップです。本音を言うことは、けっこう勇気がいる。相当なリスクもある。その中でタフなミ―テイングにもなる。口調が荒くなることも、正直あります。でも、それでいいんじゃないかなと、私は勝手に思っています。相手を故意に傷つけるような物言いさえしなければ、感情は表現して然るべきだし感情を出さない人の方が私はむしろ警戒してしまう。
●ロコ・ソラーレでは私はリーダーとして見られている。正直、そんな意識はなかったので意外でした。チームを引っ張っているというより、サポートしている感覚だったのです。同時に「そうか、サポートという形でもチームを引っ張ることは可能なんだ」という一つの形を得ました。
●「カーリング選手は7位でも8位でも3位でも、最低9試合が保証されているので疲れも感じるし、終わったなという実感は自然と抱きます。」
●「ビジネスには、2パターンがあると私は思います。儲かることを目的としたビジネスと、人と人がつながるというビジネス。私は後者を、現状では強く意識しています。過疎化の進む地方は地元の人をどんどん巻き込める、つまり密につながれるという可能性があります。」
⇒身近な良さを再発見することの大切さを教えてくれます。
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