No.0730:後悔なく生きるために大事にすべきこと
「どう生きるか つらかったときの話をしよう」
・野口聡一著
・アスコム刊
「後悔なく生きるのは宇宙に行くより難しい」からです。
- 野口聡一
- 日本の宇宙飛行士
- 1956年神奈川県茅ヶ崎出身
- 東京大学先端科学技術研究センター特任教授
- 日本大学理工学部航空宇宙工学科特任教授
- 「コロンビア号事件」「仲間の死」「自己否定」「他人と比べてしまう苦しみ」
そこから再出発し、たどり着いた「自分らしく生きること」の本質を描く
■著者曰く、「自分自身の心の中、あるいは人生に向き合っていくのはもしかしたら宇宙に行くより困難な旅かもしれません。
この本が、一人でも多くの人にとって、自分らしく後悔の無い人生を送るきかっけになること願っています」。
●NO728「宇宙に行って人生観は変わりましたか?」
⇒宇宙に行って、果たして自分の人生観が変わったかどうか確信が持てないけれど人々の期待に応え、「変わった」と言わなければならない。そんなギャップ、違和感を抱えながら・・・。
●NO729「宇宙一暗い宇宙飛行士だった?」
⇒自分はいらない人間なんだ、と苦しんだ10年間。
●NO730「後悔なく生きるために大事にすべきこと」
⇒後悔なく生きるのは宇宙に行くより難しい。
●NO731「棚卸をし、丸腰になったときこそ」
⇒本当に大事なことが見えてくる。
■「でんごんばん」こぼれ話。
●初めて宇宙空間に出て驚いたのは、音がないことです。
音は空気の振動によって伝わります。空気の無い宇宙空間に音がないことは知っていましたが、実際に体験する宇宙の無音は想像以上でした。
⇒なんだか怖そう。
●2003年2月1日に起きた、アメリカのスペースシャトル「コロンビア号」の事故。
コロンビア号は28回目のフライトを終え、地球に帰還する途中でしたが打ち上げ直後に断熱材の一部が破損していたため、大気圏に再突入する際テキサス州とルイジアナ州の上空で空中分解してしまったのです。この事故で犠牲になった7名の宇宙飛行士のうち3人は、僕の同期生でした。
⇒著者にとって死を身近に感じた大きな悲しい出来事。
後悔なく生きるために大事にすべきこと
●僕は高校生の時、テレビでスペースシャトルの打ち上げの映像を見たことがきっかけで、「宇宙ってどんなところだろう」「僕も行ってみたい」と思うようになりました。
しかし、当時は日本人宇宙飛行士もおらず、どうすればその夢がかなうか誰に聞いてもまったくわかりませんでした。
そこで、「宇宙に関する勉強をしていたら、それに近い世界に行けるかもしれない」と考え、大学及び大学院では工学部に入り、航空学を専攻。
卒業後は石川島播磨に入社し、航空技術者として超音高速旅客機のエンジン開発の仕事に従事していたのですが、31歳のとき、宇宙開発事業団が宇宙飛行士を募集していることを知り、応募しました。競争率は573倍という狭き門でしたが無事に合格しました。
●普段、仕事などでミスをした場合は、「恥ずかしい思いをする」「周りの人に叱られる」「損失が発生する」といったペナルティが発生しますが、宇宙空間でミスをした場合のペナルティは「死」であり一瞬にして自分もしくは仲間の命が失われることになります。
そう思うと、不安や恐怖に支配され、何もできなくなってしまうため僕を含め、宇宙飛行士は、訓練中やフライト中は強制的に「自分は楽天的だ」と考えるようにしています。
たとえうまくいっていなくても「うまくいっている」と思い込んで乗り切るしかないのです。宇宙飛行士が、しばしば「人間ができている」というイメージを抱かれやすいのは、そのせいかもしれません。
ところが、地上に帰ってしばらくすると、結局はまた、もともとの性格に戻ってしまいます。
●一つの会社で長く働いている人に、「自己紹介をしてください」というと「大学を卒業した後、A社のB部に配属され、32歳からC部に所属し・・・」といった具合に、その会社での職歴を話す人が少なくありません。
自分の経歴=会社の職歴
になってしまっているわけですが社会的には、それは「22歳から60歳までA社に在籍」の一行で終わってしまいます。
でも、組織を離れると、最終的な役職など関係なく、年齢や性別、学歴、体力、技術の有無などによって「何ができるか」を冷徹に評価されるようになります。
あるいは、組織から与えられるミッションや目標が失われ、「自分自身が何をしたいのか」を問われるようになります。
何十年も同じ場所に通い、仕事をし続けていた人がある日を境に、「もう来なくていい」と言われること。それは、いきなり無重力空間に放り出されるようなものかもしれません。
⇒サラリーマン(会社員・ビジネスパーソン?)の定年退職後は、まさに無重力空間に放り出されたような感じと思える方も多いのでは・・。
●「本当に宇宙へ行けるだろうか」という不安に襲われ落ち込んだり無力感にさいなまれたりしたとき
僕がしたのは、ひたすら訓練を続けることでした。無心になって同じことを繰り返す。
決して楽しい事ではありませんが、たとえ次のフライトが決まっていなくても訓練を続けることで「少しずつでも宇宙に近づいている」という実感は得られますし、訓練すればするほど体が作業を覚えていき宇宙へ行くことへの不安も少なくなっていきます。
その日にやることをきちんと決め、それをこなしていくこと。退屈で面倒だと思う単純作業を、修業のように繰り返すこと。それらは不安を克服するうえで、非常に役立ちました。
■自分を支えてくれたこと二つ。
●ミッションに取り組む中で、どんなささいなことでも目標を達成したという経験や、目標達成に向けて頑張ったという経験をしたなら、それを肯定し大事にしてください。
自分の中に、一度成功のロールモデルができれば次の目標やミッションへの挑戦へのハードルが下がるからです。
そうなれば、ますますミッションに取り組むことに幸せを感じられるようになるでしょう。
「自分はこの方向に行きたい」という強い思いを持ち目の前の目標に取り組む
⇒目標を達成し、自分の中に成功のロールモデルができる。
⇒そのロールモデルを持って、また次の目標にチャレンジする。
⇒その積み重ね。
●JAXAを退職する際、僕を支えてくれたものが、もう一つあります。
それは、宇宙飛行士になりたてのころ非常にお世話になったあるアメリカ人の宇宙飛行士の先輩から聞いた「人生というのは、新しい部屋に入ろうと思ったら、今いる部屋をいったん出なければいけない。今いる部屋のドアを閉める勇気がなければ新しい部屋には入れないんだ」という言葉でした。
次回の「でんごんばん」は、
『人はどう老いるのか』医者はホントは知っている楽な老い方、苦しむ老い方
久坂部羊著。講談社現代新書刊から。
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